縁の花

             (本物を目指して心と心のネットワーク)

   第50号

                   あした

10月7日の日、記念すべき50号で一体何を書こうかとずっと考えながら、紫陽花は小林美元先生の講義を聞き、何人かの人達と美元先生を交えて楽しい食事をし、最後に尊敬する大林宣彦監督の映画あしたを見て来ました。

誰と見たかとか、そういったやぼな事は聞かないで欲しいのですが、とにかく久しぶりに映画を見ました。

 大好きなゴジラの映画、ゴシラ対スペースゴジラ以来ですから、ちょうど10ヶ月ぶりになります。

 この頃はますます忙しくなって、映画を見る暇もありませんが、それでも今年のゴジラの映画は見たいと思います。

 紫陽花に取っては不死身のゴジラが死ぬなんて絶対に許せませんが、見届けたいと思いますが、もしよかったら誰か一緒に見ません。

 紫陽花の兄貴であり、夢でもあるゴジラが死ぬなんて、紫陽花は一人では恐くて見れないのです。

 何ていう冗談はさておいて、大林監督は、紫陽花に取ってはあのゴジラの次に大切な人です。

 映画のふたりや異人たちとの夏の映画なんか最高です。

 特に中島朋子と石田ひかりのふたりは、紫陽花に取っては忘れられない映画です。

 今でもテーマ曲を口ぶさむだけで私は幸せですし、あの映画以来紫陽花にももう一人の私が誕生しました。

 楽しい時はもう一人の紫陽花が喜んでいますし、困った時や縁の花で息詰まった時には励ましてくれます。

 そういった紫陽花の兄貴にあたる紫陽花なんかとは比べられない才能のある私がいますが、実はこの私が今度の大林監督の映画は、ふたりと同じ原作者が赤川次郎の映画だ。

 絶対に見ないといけないというものだから見たのですが、ふたりに匹敵するぐらい素晴らしい内容でした。

 愛がいっぱいで、悪人が出て来ません

 紫陽花はこういった映画は大好きです。

 是非皆さんも見て欲しい映画ですが、ちょっと今から皆さんにその映画を解決者の浜村純並に紹介したいと思います。

 最後まで内容をいったら皆さんに嫌われるかもしれませんが、どうしても久しぶりに映画の内容を書きたい気分なのです。

 というのも紫陽花は昔、大学の頃ですが、よく感動した映画のあらすじを書いていました。

 ローマの休日やマイ・フェァ・レデイなどのオードリー・ヘープバンの映画やゴットフアーザーなどの映画の内容です。

 準備第4号、縁の花で紫陽花が文章を書くようになったきっかけはある女性へのラブレターが始まりでしたと告白しましたが、その後もしばらくライムライトと名ずけて、詩とか映画のあらすじ、環境問題やノストラダムスの事などいろんな事を書きました。

 その当時読者なんか一人もいませんでしたから、一人でいつか彼女やきっとあらわれる好きな女性に見せよう何て馬鹿な事を考えていたのですが、紫陽花が後にも先にも、特定の誰かに環境問題や、今後の日本の将来をどんな事をしても教えてあげたいと思ったのは彼女だけです。

 彼女だけは今から考えたら本物にしたかったのですが、結局紫陽花の願いは実現しなかった訳です。

 でもその紫陽花の思いは今も生きています。

 その思いが小説を書くようになり、今、縁の花を書く事になっているのですが、何か懐かしい気持ちがします。

 こういったものもたまには気分転換で書いてみるのも悪くはないと思うのです。

 しかしそういったタッチのものは、今は書く訳にはいきません。

 皆さんが本物に成ってくれたら、本物を目指すような文面もおかしいので書く必用はなくなります。

 その時にはこんな映画にもの凄く感動しましたとか、こんな詩を書きました。

 こんな事に幸せや愛や優しさを感じました。

 というようなものを早く書いて、是非皆さんにも読んで欲しいとは思いますが、まだそんな時期ではないと思います。

 でもこの映画あしただけは別です。

 紫陽花は昔のように大学生になった気分で書いてみようと思います。

 しかしそうはいっても、昔のようにただ内容を解説入りで書くだけでは面白くないので、この映画を本物という考えでみたらどうなるか。

 天から見たらどう見えるかという感覚で書いて見ようと思います。

 そうすればきっと皆さんにも、紫陽花のいう本物が新たな感覚で分かると思うのです。

 さて前置きはこんな所で止めておきましょう。

 紫陽花も書きたくて書きたくて、何だかうずうずして来ました。

 読んで下さい。

 

 

                  あした

 物語は広島の尾道沖で小型客船、呼子丸が遭難した時から始ります。

 その時に乗っていた乗客は呼子丸のいかにも船乗りらしい船長や、やくだの親分の姉さんになっているもう70才にはなる金澤恵子とその一人孫になる小学生の金澤正、会社を経営している中年の森下薫、永尾という仕事人間のサラリーマンの妻である厚子と一人娘であるまだ小学生のしづか、高校生で朝倉恵という恋人がいる高柳淳とある会社で水泳のコーチをしている唐木隆司、そしていつも名前を聞かれたら私と答えている不思議な女性、私の9名です。

 本当はもう一人、その遭難から奇跡的に助かった女性がいるのですが、彼女は浜で引き上げられた後、すぐに訳あって逃げ出したので、いたのか、いなかったのかも、誰にも分かりません。

 幽霊ではなかったのかと遭難から3ヶ月後も噂されているのです。

 しかし天はそれを全部分かっています。

 その女性が奇跡的に助かったのも、実は天が見守っていたからです。

 いえ、天は助けていました。

 女性が浜まで何とか泳ぎつけるように、その後誰にも見つからないように姿を消せるように、

見えないけど助けていました。

 その女性はこの世の中でまだやらないといけない仕事があるのです。

 でも他の9名には、どうしてもこの世でやらないといけないという使命はありません。

 自分がやらないといけない事は全部終わっているのです。

 ですから天は一度にこの人達を天に帰らせる事にしました。

 世紀末、21世紀が近づいている今は、この世でも、あの世でもやる仕事が沢山あります。

 神戸の大地震のように5千人もの人が一度になくなるようなケースは、天が沢山の人をあの世に引き上げた場合が多いのですが、今回の時も同じです。

 それだけ魂のいい人ばかりが乗っていたのです。

 しかしそれはいいのですが、1つだけ困った事がありました。

 それは乗客のほとんどの人達が、この世に未練を残しているのです。

 といってそれは生の執念といったものではありません。

 高柳淳はまだ高校生なのであるような感じですが、他の人達は生きている人達にまださよならという事がいえなかったという気持ちを持っています。

 森下薫は自分が支えてあげないと何もできない妻にたいして、永尾厚子とその子供しづかは夫に、金澤澄子と正はやくざの親分であるおじちゃんに、唐木隆司は自分の愛を受け入れようとしなかった小沢小百合に、それぞれまだ別れを告げていません。

 船長は海に出る時に別れをすませていますし、私と名乗る女性は、もうとっくに恋をした事のある男性と別れをすませて問題はありませんが、他の人達にはその思いが消えません。

 それぞれに残した人達にたいして心配する事があるだけに、その別れがすまない内は天に帰えせないのです。

 ですから天はちょっと困ってしまいました。

 普通なら何となくだけど虫の予感というもので、この世や、愛する人達と気が付かない内に、別れをすませているものですが、今回はそういった別れが誰もできなかったのです。

 だから天は一度だけさよならという時間をあげる事にしました。

 本来天はちょっとしたおちゃめな所があります。

 愛があって、誰もが仲良くやれるようなわくわく、どきどきするような事が大好きです。

 何しろ天、創造主は、その為に大宇宙や地球を創り、すべての生物を誕生させ、それを楽しむ為に、自分自身をすべての生物の中に入れ、自分が体験できるようにしました。

 そんな天ですから、本来映画のような不思議な事が好きなんです。

 そしてその為に天は呼子丸を決して発見されないようにしました。

 助ける予定以外の人をすべて閉じ込め、死体が発見されないようにしました。

 海の底に呼子丸が沈んだ時に、すべての人を仮死状態にしたのです。

 そうしてあの世にも、この世にも帰られないようにして、その間の3ヶ月間で天はいろんな準備をしました。

 というのも天は何でもできます。

 未来も分かりますし、間違った事は改める事もできます。

 人間に間違っていると直接いったりはしませんが、いろんな本や人物を派遣して正す事はします。

 呼子丸で死んだ人達が会いたいという人を呼び寄せる事もできますが、それだけでは面白くありません。

 天はその素晴らしいドラマを作る為に、もっと多くの役者を集める事にしました。

 いえ、救う事にしました。

 それが金澤の子分の一人になる大木貢という青年や、貢の兄貴になる勝や剛や哲というやくざです。

 このやくざ達は、もうすぐ自ら破滅しようとしています。

 貢は父親が会社を倒産させて、自殺してから母親もすぐに後を追って死んでから人生になげやりです。

 小学校の時好きだった彼女ともさよならと別れもいえませんでしたが、その子の事ももう忘れようとしています。

 生きている意欲もなく、自分を拾って育ててくれた金澤親分を剛の命令で殺そうとしています。

 天はそんな貢をずっと見ています。

 少しやけぎみになっている貢に人を殺させる訳にはいきません。

 天はそういった事が大嫌いだからです。

 だから貢もこのドラマに参加させる事にしましたが、それは勝や剛と哲も同じです。

 金澤親分の子分であるふたりの中が悪くなったのは、ある女性が原因です。

 二人は一人の女性で争い、負けた剛とその弟の哲が、勝と争うようになりました。

 もしここで金澤親分が死んだら、二人は組の跡目争いで戦い、血を流す事になります。

 天はこういった争い、憎しみ、憎悪などは大嫌いです。

 でも勝や剛、哲など一人一人を見たら、そんなに悪い人間ではない事は天もよく知っています。

 だから天はこのドラマにこのやくざ達も呼ぶ事にしました。

 やっぱりドラマには悪役も必用です。

 このやくざが根からの悪人なら天は呼びませんが、彼らが決して根っからくさっていないので、天は立ち直らせるチャンスを与える事にしました。

 金澤親分が行けば、他の勝や貢や剛や哲が来るように仕向けたのです。

 が、天の選んだ役者はもちろんやくざだけではありません。

 唐木コーチーに水泳を教わりながらも、密かに片思いをしている安田砂由利も、その思いを告白させてあげる事ともう一つある役目をさせる為に呼びましたし、森下薫の有能な秘書の一ケ瀬布子も呼びました。

 やくざでいえば後一人、何でも修理をするのが好きな勝の子分のケンも呼びました。

それぞれ役目があるのですが、天は後二人、死んでしまった9人とはまったく縁のない女子大生、原田法子とその親友の綿貫ルミという呑気な女子大生も呼びました。

 というのも貢と法子は愛しあっています。

 法子と貢は小学生の頃から仲良く、好き会っていました。

 二人とも小さい頃から仲良しで石投げが得意です。

 そんな二人の関係は貢の家庭の事情で突然終わってしまったのですが、法子が貢の事をずっと思っているのは天が一番よく知っています。

 十年経過しても法子は貢に合わせて欲しいと天に頼みますし、貢の家庭の事情を知っている法子が今でも貢の事を心配しているのは天が一番よく知っているからです。

 だから天はそんな法子の思いを叶えてあげる事にしました。

 今の状態の貢を救えるのは法子だけですし、貢に最後に立ち直る大きなチャンスをあげたかったのです。

 こうして役者は全員決りました。

 後は1つに集めるだけです。

 天はその場所として呼子浜を選びました。

 ここなら夜誰も来る心配はありませんし、古いけど待合場もあります。

 場所としては最適です。

 またここなら多くの人を一日で集められます。

 天はそこに決めると9名の死者に、各自が一人だけ呼びたい人を午前0時に呼子浜に呼ぶ事を許しました。

 その場所から決して離れないという条件と、朝になって船が誰かに見られるまでに全員が船に乗り込み、出港するという条件を付けてです。

 9名がその約束に応じたので、一人一人別な方法で天は、会いたがっている人を呼んだのです。

 それが女子高校生の朝倉恵の場合は、授業中にスライドのスクリーンの中に、「恵へ今夜12時ここで待っている淳。呼子浜」と書いている文字で、やくざの親分金沢には孫からの手紙で、永尾要治にはパソコンに映し出された妻と子供のメッセージで、水泳部員の安田砂由利と同僚のマネージャーの小沢小百合は伝言板に張っている唐木コーチーのメッセージで呼ばれました。

 文面は全部同じです。おじちゃんへ、あなたへ、SAYURIAへ、今夜12時呼子浜にきてくれないかです。

 森下美津子の場合はちょっと違って、夢の中で夫の声がしたからですが、いっている内容は全部同じでした。

たった文章にしたら25文字でしかないものなのに、受け取った人は呼子浜へと向かい始めます。

 誰もがからかわれているのではないか。

 そんなはずがないと心の中で思いながらも、「本当に会えるかもしれない」という希望を捨てきれず、恵は母親にあした返って来るから心配しないでと約束して自転車で、砂由利は単車で、小百合は歩いて、金澤は子分の勝、ケン、運転手の貢と車で、その金澤を殺す為に剛と哲も後を追って車で、美津子は秘書の布子の運転するボートで、それぞれ動き出したのです。

 が中にはそんなメッセージを残酷ないたずらだととらえる永尾のような人もいます。

 「会いたい。会えるものならもう一度」という信じたい気持ちはあるのですが、必死で忘れようとしている事を再び思い出したくないという気持ちが強いのです。

 しかし天はそんな永尾の性格も最初からお見通しです。

 永尾に思いを寄せている部下の直子に「私信じているのです。きっとこんな奇跡も起きるだろう」といわせて強引に行くように仕向けます。

 結局永尾もまた直子に借りた車で呼子浜へと向かいます。

 こうしていろんな人が集まりますが、実はすべてのメッセージは天がいろんな人を使って、何となく誰かに書かせたもので、その本人自体何故書いたのか分からなくしています。

 これが天のやり方で、それは呑気な女子大性、法子とルミの場合も同じです。

 二人に尾道まで3ヶ月間掛けて旅行させ、帰りの交通費だけしかないように仕向けます。

 その上わざと船の乗る時間を間違えさせて、宿ではなく呼子浜の待合室にしか泊まれないようにしたのです。

 天はこのように決して自ら直接何かをせず、人間や本などを利用するのです。

 さあこうして呼子浜に全員が集まる事になりましたが、そのトップバッターは法子とルミの二人です。

 可哀想にお金がなくて、ふたりは電気もない待合室で、夜になると寝る事になったのです。

 しかし天がやれる事はそこまでです。

 後は参加した人達で、各自でやらないといけません。

 天は側から見守り、力も貸しますが、たいした事はできません。

 そしてそんな中でまず金澤親分達と、後をつけた剛と哲が呼子浜に付きました。

 剛と哲は外から金沢達を見張っていたのです。

 が、そんな剛と哲の前に、恵や、永尾とバイクが故障して車に乗せて貰った砂由利、ちょっと遅れて小百合や美津子と秘書の布子が次々と現れやくざの二人は戸惑ってしまいます。

 金澤の後を付けて来た剛と哲にはさっぱり訳が分からなかったのです。

 でも戸惑っているのは剛と哲だけではありません。

 自分と同じようにメッセージを貰って来た人達が集まって来た事で、からかわれているのでもなければ、偶然でもない。

 本当に会えるのだと確信を持ち始めた人達は興奮を隠せませんし、その場に何故自分がいるのか分からない法子とルリも戸惑っていました。

 事情が分かり始めた事で、いくら呑気な女子大生も、呑気ではいられなくなったのです。

 しかしその中で、法子の方は金澤達に貢、貢としかられている同じ年ぐらいのやくざの下ぱっが先から気に成って仕方がありませんでした。

 貢と呼ばれている青年は、もしかしたら小さい時にずっと一緒だった大木貢ではないか。

 法子にはその確信があったのです。

 でも法子はそれをなかなか確かめられません。

 勝とケンに待合所で寝ていた法子とルミは追い出されそうになり、その時、偶然貢とぶっつかった法子は、貢が拳銃を隠し持っているのに気が付いていました。

 天が貢が人を殺そうとしている事を法子に教える為にしたのですが、貢がやくざになっていると思いたくない法子は、自分を追いだそうとした勝の前では聞けませんでした。

 もう一人のケンはやくざよりも電気屋になったらいいのにと思うぐらい、どんなものでも修理してしまう天才で、まるで待合室の電気なんかをつける為に存在するのではないかと思える人で、恐くはありませんし、金澤親分は二人を追いだそうとした勝に注意する、物分かりのいい人で好感をもてるのですが、勝という人は苦手なのです。

 でもそんな法子にもすぐにチャンスが来ました。

 いつもと様子の違う貢を責める勝の為に、貢は外に出ましたが、それを追いかけた法子は、貢が金沢親分を殺すと独り言でいったのを偶然聞いてしまいます。

 それを聞いた法子は「あなた大木貢でしょう」といって驚かせて、金沢を撃つのをやめさせようとします。

 が、そんな法子のいう事に、貢はいう事を聞きません。

 貢もまた法子の存在に気が付いていましたが、こんな自分の姿を見られたくありませんでした。

 今更もうどうする事もできず、二人の思い出の石までも「今も持っている」と手渡した法子に「いいたかったら金澤親分にいえば」と開き直ってしまうつまつです。

 しかし天はそんな法子を手伝う為に少しあらぽい事をします。

 現状が分からずにいらいらしている哲が偵察にやって来た時に法子と合わせるようにしたのです。

 哲はそれ幸いに法子を人質にして、金澤親分を外に呼び出して殺そうとします。

 金沢も哲の前にあらわれ、哲の試みは成功しそうになるのです。

 でもそんな哲の試みは見事に失敗します。

 貢の昔からの石投げの腕を信じている法子の「投げて」という叫びに貢がついに答えたからです。

 法子との思い出の石を投げた貢の腕は今も正確で、見事に哲の顔面を直撃し、慌てて哲が逃げ出したからです。

 が、それでもまだ金澤を殺す貢の決心は変りません。

 こうした事件で素人の人に危険が及ぶ事を恐れた金澤が自宅に帰ろうとしたのを、恵が「今帰ったら、おばちゃんとお孫さんに、私達どういったらいいのですか」と引き止めた後、法子は外で見張りをしている貢をある決心をすると連れ出し、昨日見つけたある小屋に連れていきます。

 そこで法子は再び貢に「あの人を殺すのをやめて。いえ、死ぬのをやめて。あの人が死んだら貢も殺されるのよ。私の知ってる貢は死ぬわ」といって説得します。

 貢はそんな法子に「あの人は姉さんとお孫さんが死んでから死にたがっているのさ」と答えます。

 法子はそんな貢の返答で、貢の気持ちを理解します。

 貢が金澤親分を尊敬し、愛している事。

 だから身寄りがなく、一人ぽっちになった金澤親分を見ていられなくて殺そうとしている事。

 貢は法子の知っている優しい貢と変っていない事に気が付くのです。

 それで法子はある決心をした事を実行します。

 貢の前で来ている服を脱ぎ始めました。

 そして貢に「一人の女性を愛した事がある。命をかけても守りたいと思う人を、自分に何もかも賭けててくれる人を愛して、触れた事はある」とけなげに迫ります。

法子は何もかも捨てる覚悟でその後も、たじたじの貢に、

「手を貸して」「感じる。何か感じる。体が熱くならない。何か感じない」

 と生まれたままの姿になった法子はいうと、貢の手を持つと自分の胸に押しあてました。

「これが生きている事よ。死ねば、もう何も感じないのよ。意地なのメンツが何よ。私の肌に触れるよりすばらしいの」

「生きて、貢、生きていて。生きて、抱きしめて・・・・・・」

 といい、そんな法子の愛は金澤と同じように、早く死にたがっている貢の心をいやしました。

 自分を愛してくれる法子に男は弱いもので完全に負けてしまったのです。

 が、これが天にとっても意外な事でした。

 法子が貢の為にそんな事までするとは天は思いませんでした。

 法子という女性の魂は輝いており、二人の行為を(それは紫陽花です)わくわく、どきどきして見ていたのです。

 また法子と貢のカップルが誕生している間に、待合室では、この場に本来なら呼んで貰えなかったもの同志で、砂由利と布子が親しくなっていました。

 砂由利はもう一人の唐木コーチーの本命である小百合が来た事で、SAYURIA違いで自分が呼ばれていない事に気が付きましたし、秘書の布子も、頼りない美津子を連れて来た事で役目が終わった事を感じていました。

 もうすぐあらわれる9人の死者と本当に短い時間をすごそうとしている人達の邪魔をする訳にもいかず、会いたいけど会ってもいいのか、どうかで迷っていたのです。

 でもそんな悩みも午前0時に実際に沈んだはずの呼子丸が海底からあらわれ、呼子浜にその姿をあらわした時に終わります。

 秘書の布子の「あの船だわ。ああそんな事が、そんなことが」という驚きの声をよそに、全員の前で、時間になるといって慌てて駆けつけた法子と貢の前にも船はあらわれ、まず高柳淳が恵に会う為に、生きていると時と同じように肉体を持った姿で、船から走って出て来ました。

 身体もずっと海底にいたのでちょっと冷たくなっている以外は変らず、それぞれで待っている人達をびっくりさせます。

 そんな人達の前に、続いて、唐木隆司、永尾厚子としづか、森下薫、金澤澄子と正があらわれ、それぞれの会いたいと思う人達と会います。

 きっとメッセージを見て来てくれると信じてはいても、来てくれるかどうか分からなかっただけに生きている人達の姿は死んだはずの人も安心させます。

 森下薫は秘書の布子が妻の美津子と一緒に来た事に予想はしていたものの驚き、唐木隆司は自分の教え子の砂由利が来た事にびっくりしながらも心よく迎え、ここに奇跡が起こりました。

 めいめいの死んだ人達は、それぞれ呼んだ人にさよならと別れをいう為に、時間を惜しむように再会の時間を持ったのです。

 そしてその中で死んだはずの妻の厚子としづかは、仕事熱心なあまりもっと家庭の事を大切にすべきだったと後悔して、まるで仕事が手につかない永尾に「あなたには仕事が必要なの。早く私達の事は忘れて仕事をして」と励まします。

 厚子としづかは、生きている夫の永尾の事が心配だったのです。

 またそれは森下薫も同じです。

 自分の顔を見て、倒れてしまった妻の美津子の将来が心配で心配でたまりません。

 自分の会社の財産をはっきりしておかないと美津子では何もできない事は分かっています。

 秘書の布子が美津子の元にいてくれる事にほっとしながらも、考えている会社の整理を布子に指示し始めました。

 唐木隆司は自分のプロポーズを受け入れてくれなかった訳を尋ね、小百合が実は白血病でもうすぐ死んでしまう事をやっと教わります。

 澄子と正は一人ぽっちになったおじちゃんに別れをいう為に、それぞれの目的を果たすのです。

 しかしそんな中で法子の親友、ルミだけは浮いていました。

 誰も自分を必要とはせず、法子と貢の中にあてられたルミは一人で、その場から歩いて出て行こうとしたのです。

 でもこれは天に取っては意外な事でした。

 しかもその後はいろいろと天も予想しない事がどんどん起こります。

 何しろ人間は弱い動物です。 

 寂しがりやの朝倉淳が恵を呼んだのは、生きている間に恵と約束した「ずっと一緒にいよう」という約束を恵が守って、自分と同じように死んでくれると思っていたからですが、まさかそれを恵と会った後も持ち続けるとは天も思いませんでした。

朝倉淳も本心ではいけない事だと分かってはいるのですが、一人でいたくないという気持ちを押さえられないのです。

 また永尾は死んだはずの厚子としづかを家に連れて帰ろうとします。

 最初は車の中で厚子を激しく求めた永尾は、厚子としづかを天が許されないと分かっていながらも、もう二度と放したくなくなるのです。

 そして金澤親分は、孫の正の代わりに自分が呼子丸に乗ろうとします。

 自分が呼子丸で死ぬ代わりに孫の命を助けて貰おうとするのです。

 その為に金澤親分は跡目を正式に勝に譲る事を宣言します。

 それぞれの人達はいろんな行動を愛がある上に取り始め、天はある程度予想はしていました   が、人間達にすべて任せているので何が起こるかはわからないのです。

 でも天は未来をみる気になればいつでも見る事ができます。

 それらの問題を天は影から解決する方向へと持っていきます。

 車でこの場から去ろうとする永尾家には娘のしづかのお腹を痛くさせて、警告を与えます。

 永尾もそれであきらめ呼子浜へと戻ります。

 天はそんな永尾に時間を調整して、呼子浜から出たのはいいけど、お金もなくどこを歩いていいのか分からず途方にくれているルミと会わせ、呼子浜に戻します。

 ルミにはどうしてもやって欲しい事があるのです。

 また朝倉淳に対しては再び哲を使います。

 哲に今度は恵と会わせ、人質になるようにします。

 朝倉淳の目の前で恵が哲のいう事を聞かないと殺されるように仕向けるのです。

 それで朝倉淳にも自分の本心を悟らせようとしたのです。

 しかしそんな天の試みはひやひやものでした。

 朝倉淳は哲が恵の首を閉めようとしても止めません。

 むしろそれを歓迎する所があり、反対に哲を戸惑わらせます。

 結局哲は恵を殺しきれずに逃げ、朝倉淳は殺されたと思った恵に触れて、やっと自分の本心に気が付きます。

 「恵、死ぬな。死ぬな。生きろと」

 という朝倉淳の言葉で、恵は息を吹き替えします。

 二人はこうしてやっと分かりあえたのです。

 未来を見る気になればいつでも分かる天が、哲が女子高校生の恵を殺せないのが分かっていて許した事ですが、それでうまくいったのです。

 こうしてドラマはどんどん進んでいきます。

 そしてその中で、天が望んだように愛がある、すべての人が分かりあえるように進んでいきます。

 砂由利と秘書の布子の一見逸れコンピは、砂由利のいった「呼子丸を前に見た事があるみたいでしたけど、違っていたら御免なさい。もしかしたら呼子浜で助けられて姿を消した女性、幽霊とはあなたの事じゃないのですか」という言葉をきっかけにお互いが理解するようになります。

 布子はその砂由利の言葉をあっさり認め、自分と社長が愛しあっている関係だという事を認めます。

 その上で布子は自分が森下の妻、美津子を愛している事。

 美津子の為に、自分のできる事をやる覚悟だという事をいいます。

 社長との関係も絶対にばれないように必死で、助けられた呼子浜から逃げた事もいったのです。

 天はそんな布子の気持ちが大好きでした。

 布子が頼りない美津子を支えすぎないように注意しないといけませんが、人の為に自分の人生を支える布子の魂はもの凄く綺麗だったのです。

 またもう一つ天を感激させた事がありました。

 それは永尾の運転する車で厚子やしづかと呼子浜に戻されたルミと呼子丸の中にいる私と名乗る女性の会話です。

 ルミは呼子浜に戻っても待合所に戻る訳にはいきません。

 行き場のないルミはやがて不思議な歌の聞こえる呼子丸の中に入り、私と名乗る女性と出会います。

 実はこれが天の期待している事でした。

 呼子丸にいる私と名乗る女性の本心が知りたくて、天はルミを呼子浜に呼んだのです。

 しかもその会話は天の期待通りでした。

「あなたは誰にも会わないの。会いたい人はいないの。お友達とか、恋人とか」

と尋ねるルミに対して、名前をルミに私と名乗った女性は、

「会いたい人はいるわ。でもね、会いたい時には目をつぶって、こうして唄うの。誰かが私に会いたい時にも、そうしてくれればいい。人間ってね、すぐ近くにいても遠い人もいれば、うんと離れていてもすぐ近くに感じる人もいる。・・私の愛する人は訳あって、うんと遠い所にいるの。一生、一緒に暮す事はできないの。でも私には、一番近い人。・・この唄をつくった人よ。・・・・」

 というと唄を楽しそうに唄い、天をも感激させます。

 天はそんな地味だけど、愛のある人は大好きなのです。

 ルミもまたここで自分の居場所を見つけ、待合所にいたすべての人が仲良くなれるようになったのです。

 しかし剛と哲だけは違います。

 天はそんな二人にも大きなチャンスを与えます。

 金澤親分の命をしつこく狙う剛と哲の二人の試みは天が絶対に許さない為に失敗し、勝と剛、哲は男らしく殴り合うようになります。

 昔兄弟のように金澤親分に育てられた勝と剛は、そこで分かりあえます。

 これでドラマに参加したすべての人が短い時間の内に目的を果たし、お別れの時間になりました。

 呼子丸に乗り込む時間になったのです。

 そしてそれぞれの人は別れを告げます。

 白血病の小百合は「残り少ない時間を必死でいきろ。まっているから」という唐木隆司に対して、「私、恋とかして、きっと悪い娘になるよ」と答えて別れを告げます。

もう一人の間違えてきた砂由利は、自分が持っている水泳の記録の時間だけ、コーチーに見つめて貰って、「記録を縮めなければよかった」という言葉を残します。

 美津子は呼子丸に乗り込もうとした森下薫に対して、忘れていたのか、もっとも大事な報告、赤ちゃんの誕生の報告をして喜ばせます。

 このようにそれぞれの別れをすませ、永尾と高柳も呼子丸に乗り込み、最後に金澤親分と妻の澄子も乗りました。

 天も孫の正の代わりに、金澤親分が船に乗る事を認めたのです。

 こうして午前0時に始った9人の死者との短い時間は、すべての人に幸せを残して終わりました。

 最後に呼子丸が浜から出て行く姿を見て、泳げない恵が思わず海に飛び込んで「「淳、私も連れって」という恵に対して、高柳淳が「さようなら。さようなら」というシーンで終わりました。

 そんな恵を天が万が一の事を考えて用意した砂由利が助け、物語は終わりました。

 後は生き残った人がそれぞれ簡単に呼子浜と素敵な縁を作ってくれた、決して目には見えないけど、最大の貢献者に天に感謝をするとお別れをしたのです。

        終わり。・・・・・・・・

 

 

 さて皆さんどうでした。

 紫陽花の映画あしたは、皆さんを感激させる事ができましたか。

 長いあらすじ紹介になりましたが、わくわくして読んで貰えました。

 是非意見を聞きたいですが、紫陽花は1つだけ皆さんにここで気が付いて欲しい事があります。

 それは映画あしたはこれで終わりましたが、縁の花という物語はこれからもずっと続くという事です。

 しかもその縁の花という物語の規模は、映画あしたとは比較にならないぐらいスケールが大きいです。

 何しろこの3、4年で、全人類を救うというのですから、これ以上大きな話はありませんし、物語もファンタジーではなく、実際に皆さんが経験できる話です。

 また登場人物も凄いメンバーが揃っています。

 日本の霊界の指導者でサイ・ババに匹敵するという知花先生から始って、笑顔共和国の福田純子さんや高木さんのいる地球村の人達もいますし、他にも先生と名の付く人はいます。

 水出先生もいれば、小林美元先生など他にも凄い先生がいます。

 その上先生はどんどん縁が出来れば縁の花は増やす事ができます。

 また先生でなくても凄いメンバーもいます。

 本当に人類や地球の事を愛している素晴らしい人達です。

 かがやきの会の川北さんや末吉さんもそうですし、MGクルーの中にもいます。

 これらの本物の人達は今後絶対に天がこの世で必要とすると紫陽花は信じていますが、将来性はばっちりです。

 今はまだそんな大きな力はなくても、MGだって後2、3年もすれば、知花先生がいうように凄い組織になっていると思いますが、その時にはとんでもない事がやれると思うと紫陽花はわくわく、どきどきします。

 今の時点でも紫陽花のバックには1万3千人以上の多くのMG同志がいるのです。

 だから縁の花という物語も、これからどれだけ発展するか考えたら恐ろしい気がします。

 が、ここで皆さんに分かって欲しい事は、その縁の花の物語のシナリオーを書いているのは紫陽花ではないという事です。

 それは天でも神でも創造主でも、宇宙意識と呼んでも構いませんが、もっと次元の高い存在です。

 紫陽花もまた縁の花の物語から見れば、登場人物の一人でしかすぎません。

 紫陽花の役割は、縁の花を書いて、天が呼子浜に登場人物を集めたように、名前を書いた人や、これから書く人や、送っているすべての人をいつか一つにまとめる事です。

 ですから縁の花の物語はまだ始った段階です。

 映画あしたの午前0時にはなってはいないのです。

 でも始ってはいます。

 これから天がどういった登場人物を選ぶかは分かりませんが、物語は急速に転換し、縁の花という一つの大きな巨大な縁にまとめ、すべての登場人物が愛によって分かりあえると思います。

 その時きっと鳥肌がたつような凄い奇跡が起こる。

 たぶん輝ける素晴らしい21世紀の為に、縁の花も活躍する事ができると思います。

 皆さん、一人一人そんな大きな可能性がある事を、紫陽花と認識して欲しいのです。

 しかもその可能性は、縁の花の読者にはすべてあります。

 自分にはそんな能力がないなんていう人はいないはずです。

 天が映画あしたですべての人に役を与えたように、縁の花物語でもやる役がかならずあるのです。

 しかしそれをする為にはたった一つだけ条件があります。

 それが愛を持つという事です。

 縁の花という物語には悪人なんか一人もいません。

 邪魔をする人もいません。

 皆さんが愛を持って、縁の花を読んでくれたら、天がきっと素晴らしい舞台や役を作ってくれます。

 だから縁の花という物語を、自分も参加している物語だと思って愛して下さい。

 楽しんで下さい。

 そして最後に行動して下さい。

 そうすれば皆さん一人一人に素晴らしい役目が待っていると思います。

 では、これで。・・・・・・

         平成7年10月22日


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