四月二十三日(金)発信 nO三七 石黒大圓

 (пZ六―六二五一―一四九六 一四九七)

 

  いつもありがとうございます。 先週の土曜日に、新宿で炊き出しと清掃をしておられる、津田さんの紹介でスウェーデン人が来阪しました。 彼は日本の野宿者問題のドキュメンタリーを作っていて、新宿中央公園での津田さんたちの活動を取材していました。 この問題については大阪の釜が崎へ行かなくてはと助言され、大阪なら「石黒」がいる、ということで来られたのです。 

  彼は若い時に名古屋でホームステイして勉強し、高校や大学へも行き日本語はペラペラ。 「ちょうど良い。 釜が崎の三角公園で、毎週土曜日・昼から炊き出しがある」と二人で参加しました。 南海電車新今宮駅を降り、目の前の巨大なあいりん職業安定センターへまず行きました。 

一階にも二階にも数十人の人々がコンクリートの上に新聞や段ボール敷いて寝ている。 職安のコーナーには仕事の張り紙など一つもない。 仕事さえあれば大の大人がこんな所で昼間から寝なくてすむのに。 何ヶ月も仕事がなければ体は弱るし意欲も下がる。 早く働かせてあげたい。    

公園で不法占拠の青テント暮らしをして、自由に自活生活できている古株の野宿者と、新参のこの人々とは質が違うのだ。 一緒にして非難するのは筋違いと思う。 もっとも数ヶ月も地面の上で寝ていたら、雨や寒さから逃れるため不法であっても家を作りたくなるのは仕方ないだろう。

あいりんセンターの横の道路には手荷物が一列に並べてある。 大阪市が無料で提供している簡易宿泊所(シェルター)に入るのに、その切符をもらうため、昼間から順番待ちをしているのだ。 荷物を並べて本人の代わりをしている。 仕事さえあれば昼間からこんなことをしなくてもいいのに。 この人たちの存在がもったいない。

しかし荷物をこのように放置しているとよく盗難にあう。 大阪駅でも盗られたと泣き付かれ、しょんぼりしている姿を見ることがある。

野宿者でも善人ばかりではない。 どこにでも悪い奴はいる。 わずかな私物を取られて、いいかげん、全て人生がいやになる人もいるだろう。 惨めな者どうしが傷つけ合っている姿を見るのはつらい。

シェルターは釜が崎に最近一ヶ所新たに作られ、計二ヶ所七百人分ほどある。 しかし全員が入れるわけではない。 シャワー等もあるが狭く、荷物の多い人は嫌がる。 それに朝早く起きて仕事に行く人に合わせて朝四時半には追い出される。 だから評判が悪い。 しかも青テントから追い出されて、息が詰まるようなシェルターに入ることを強要されて首を吊る人もいるのだ。

あいりんセンターから公園までビデオを写しながら、スウェーデン人のサイモンさんと歩く。 道路沿いには、机の上に偽ルイ・ヴィトンなどのカバンや時計、地べたでAVビデオなどを売る店・・オヤジたちのフリーマーケットが延々と続く。 南海電車の高架下の左右の道路には何十もの店が連なり、かなり安いのか、車で買出しに来る人々や近くの住人たちが、縁日の如くうろつき回っている。  

ビデオ取りをしながら三角公園に入りかけた時に、入り口で注意された。 「プライバシーがあるんやから勝手に写すな!」 そう言ってスキンヘッドのオヤジが炊き出し現場のテントまで来て憤懣やる方なき様。 少々ビビル。 しかし彼と座り込んで話していて態度一変。親友扱いに。 オヤジは以前新宿にいて炊き出しに関わり、向こうのリーダーたちと顔なじみとのこと。 そして再び「東京まで歩いて戻る」と?。 彼は肝臓ガンで余命半年と宣告されている。(続) 


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