いのちの風 №６７６―その２
石黒大圓（だいえん）
【今回のテーマ】
２月「日の丸行進」／２月「いのちと出会う会」／ミュージカル映画「レ・ミゼラブル」
（その１からのつづき）
この映画では多くの忘れられないほどの美しいメロディの名曲が歌われる。
今も耳の奥に残るそれらのメロディ。 全編を歌でつづる感動の連続。
録音したものに「くちパク」で合わすのではなく、舞台と同じように撮影現場で
演技しながら歌い、生で収録という画期的手法により迫力ある画面になっている。
貧民窟の虐げられた人々、貧しく小さくされた人々の姿、生と死の苦悩、生きる
喜び、希望への讃歌、困難に立ち向かう勇気、無償の愛、切ない恋、夢やぶれた
哀しさ、戦闘シーン、一方ではコメディーの場面で笑い、脇役のホームレスの
子供たちの姿には泣かされます。
「レ・ミゼラブル」はキリスト教文学としてキリスト教の真髄を各画面で見せている、
と私は思います。
ジャンの悔い改めは、イエスを裏切った弟子たちが悔い改めて命さえ投げ出す
キリスト教伝道士となった姿に重なります。
ジャベールはキリスト教徒を徹底的に弾圧した回心前の聖パウロと重なります。
売春婦に身を落としたファンテーヌを救う市長ジャンの姿は、イエス伝説の中にある
「娼婦マグダラのマリアを妻としたイエス」に重なる。
娘にも会えず不治の病いをも得て道端で嘆き悲しむファンテーヌ。 彼女を救う
ジャンの姿は、道端で行き倒れになった人を救う、イエスが教えた
「善きサマリア人のたとえ」の如きです。
法と正義を振りかざすジャベールが自殺する姿にイエスを裏切ったユダが重なる。
若者が革命をめざす姿は、ユダヤ民衆の革命への期待を込めてエルサレムへ、
ロバに乗り入城した生前の救世主イエスの姿に重なります。
私が何より感動し慟哭したのは、バリケードを築き革命蜂起した時に歌われた
「民衆の歌」です。 この時に私はやはり根っからの革命派だと思いました。
それも戦後のＧＨＱや左翼、自民党左派が築いてきた「戦後レジーム（旧体制」
に異議申し立てをする反体制派です。
★ 「民衆の歌」（革命の歌）
「戦う者の歌が聴こえるか？ 鼓動があのドラムと
響き合えば 新たに熱い 生命がはじまる
明日が来たとき そうさ明日が！
列にはいれよ 我らの味方に 砦の向こうに
世界がある 戦え それが自由への道
（戦う者の歌が聴こえるか？・・・繰り返し）
悔いはしないな たとえ倒れても 流す血潮が
うるおす祖国を しかばね超えて 拓け 明日のフランス
（戦う者の歌が聴こえるか？・・・繰り返し）」
そして映画のラストシーンは革命蜂起で死んだ多くの若者たちや民衆、子供たちが、
輝かしく響き渡るように「天国への凱旋歌」を歌う。 戦場ともなった大広場に築
かれた、家具などを積み上げた巨大な砦の上に彼らは立ち、フランス国旗や赤旗が
ひるがえる。
明日を信じ懸命に生きた名もなき人々の魂からほとばしる叫び声。
号泣しそうでした。 ぜひご覧になってください。
★ 「天国への凱旋歌」（私の命名、「民衆の歌」と同曲）
「若者たちの声が聴こえるか 光り求め高まる 歌の声が
世に苦しみの炎 消えないが どんな闇夜も やがて朝が
彼ら主の国で 自由に生きる 鋤や鍬を取り 剣を捨てる
鎖は切れて みな救われる 列に入れよ 我らの味方に
砦の向こうに 憧れの世界 みな聴こえるか
ドラムの響きが
彼ら夢見た明日が来るよ 列に入れよ 我らの味方に
砦の向こうに 憧れの世界 みな聴こえるか
ドラムの響きが
彼ら夢見た 明日が来るよ ああ明日は」
私はこの時に「戦後レジーム」のガラクタの山の上に立って、これを踏みつけ、
君が代を歌い、日の丸を掲げることを夢に見ていました。
かってソ連国歌ともなった労働歌「インターナショナル」を歌い身を
震わせた若き私。
それが今は「昭和維新の歌（青年日本の歌）」や「民衆の歌」を歌って
心鼓舞し身躍る中年となりました。
配給会社、東宝東和の１２月の発表によると、映画「レ・ミゼラブル」の興行収入
が、過去最高だった「オペラ座の怪人」を抜いてミュージカル映画として歴代最高
となりました。
そして今年１月には、「レ・ミゼラブル」が米ゴールデングローブ賞映画の作品賞
を受賞。 コメディー・ミュージカル部門での受賞でした。 ジャン・バルジャン
を演じたヒュー・ジャックマンがコメディー・ミュージカル部門の主演男優賞を、
ファンテーヌ役のアン・ハサウェイは同部門の助演女優賞を獲得。
作品賞を含む最多３部門で受賞。 この賞は米アカデミー賞の前哨戦となるものです。
監督のトム・フーパーはイギリス人映画監督。 ２１０年の「英国王のスピーチ」
がアカデミー作品賞をはじめとする様々な賞を受賞し、フーパー自身もアカデミー
監督賞を受賞し、再びアカデミー賞を取る勢いです。
（完）
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