【いのちの風 №５０８】
平成１９年６月８日（金）発信 石黒大圓（だいえん）
【今回のテーマ】
グアム人の悲しみ／市民としての権利と義務と強制／言葉を失ない滅びゆく民
いつもありがとうございます。今月はこれから二つのイベントがあります。 よければご参加ください。
『せんば花金夜市』
踊りと歌のイベント 六月十五日・金 十七時半開始 無料
テレビや演劇でおなじみの紅萬子さん司会／よさこいソーラン踊り（石黒出場）／三味線＆民謡プロ歌手（中央区倫理法人会の加藤清子さん出場）／オークション／中国刀と扇舞＆太極柔力玉／男女・新舞踊／チューバ管楽器演奏／フラメンコ・ダンス 十九時半終了
せんばエプソンビル前広場（心斎橋筋の南久宝寺町通りと博労町通りの間。旧・丸善書店の北西隣）雨天の場合は中止
『子供たちに光を』
第六十九回「いのちと出会う会」二十一日・木 十八時半 千円 應典院6771-7641
余命四ヶ月から生還された後にご自分の使命を感得され全国に講演へ。そしてカラー心理セラピーを通して子供たちの病んだ心を癒す仕事を続けられ、最近になって描かれるようになった光り輝くパステル絵画は多くの人々の魂を癒しておられます。天からのメッセージを受け取って光輝く人生を歩むお手伝いをされています。 カラー心理セラピスト寺田のり子さん
【国持たぬ 民族としての 悲しみよ】
（前回のｊｕｎｊｕｎさんの日記の続きです）
サイパン島はミクロネシアに属し、住民はチャモロ人という。 同じチャモロ人の島で、近代史の中で違う運命をたどったところがある。 グアム島である。
サイパンは、ドイツ領→日本領 そして、戦
後は、アメリカの委任統治領になった。 つまり、戦後自分達で独立国家を作れないからアメリカに保護された地域ということで、アメリカ領ではない。
それに対して、グアム島は、戦前からアメリカ領で、現在は、アメリカの準州の一つである。
私は、サイパンでチャモロ人のおじいさんの話を聞いてから、もう一つの
チャモロ人の島、グアム島のことが頭にひっかかっていた。 でも、「あそこは大丈夫、アメリカの準州なんだから。サイパンのようにミジメじゃない」と信じようとしたが、やっぱり現実を知りたかった。
それで、サイパン
を訪れた数年後、グアムに行くことにした。
私は旅行会社が用意してくれたツアーを全て断って、海岸を歩いていた。
海岸にいるのはほとんど外国人観光客だったが、その海岸の片隅に現地の人達が集まっていた。 私は彼らに「何をしているの？」と
声をかけた。
すると、彼らは「私達に声をかけてくれてありがとう。 今バーベキューをしているから、どうぞ食べていってください」と私を彼らの輪の中に招き入れた。
そして、いたれりつくせりのおもて
なしをしてくれた。
そして最後に、一人の男性が、「私達と一緒に食事してくれてありがとう。 お礼に明日、私のプランテーション（農園）でパーティーするから、それに招待したい。 来てくれますか」と私に言ったのである。
飲み食いさせ
てもらったのは私の方で、お礼を言うべきなのは私の方である。
びっくりして、「お礼を言うのは私のほうだ」と言ったら、
「日本人観光客で、私達に声をかけてくれたのは、あなたが始めてです。 彼らはグアムに来るけれど、ホテルに泊まって、海岸で泳いで、そしてバスでポリネシアダンスを見にいく。 ここは、ミクロネシアであって、ポリネシアじゃないのに…」
と彼らは口々に言った。
…そう言えば、断ったツアーの中に、ポリネシアショーっていうのがあったな。
何でグアムでポリネシアダンスを見なきゃいけないんだって思ったけど、やっぱ、グアムの人も面白くなかったんだ。
「だから、あなたを招待したいのです。 明日の午後３時にホ
テルのロビーで待っています」 …へ？
で、嘘かと思ったんだけど、次の日、午後３時５分前にホテルのロビーに下りていったら、すでにその人が待っていた。
南の人は時間にルーズだと思ってたけど、随分時間に正確なんだと、ちょっとびっくり。 そして彼の車でプランテーションに行った。
着いたところは、南方の雑木林。 これが農園？って
思ったけど、あちこちに食べられる植物が植わっている。 ああ、そうか。南の島ではこれでいいんだと納得し、グアムの人達が、施しで食べているのではなく自分達の食べ物を自分達で生産していることを知って嬉しかった。
サイパン島
には、自分達の食べ物を得る森さえ存在しないのだ。 あの植物のために...。
やっぱり、準州。ここには小さいけど産業がある。よかった…。
私たちがそこに着いたとき、すでにパーティーは始まっていた。 チャモロ人、白人のアメリカ人、そして、その近くの建築現場で働いている韓国人もいた。
皆で。 飲んで、食べて、踊って、とても
楽しそう。 一人が「アメリカ万歳！」と叫ぶと、皆も「アメリカ万歳！」と叫。
…そんな中、私の背中にチャモロ人の男性が一人がそっと立った。 そして、私の耳
元で、「あの紳士を見てください」と言った。
びっくりして振り向くと、
「振り向かないで…。 とにかく見てください。…彼は右足をベトナムに置いてきました」
「それから、あの淑女を見てください。 …彼女の息子は首と足をベトナム
に置いてきました」 と続けた。 「え？ 首と足？ と言うことは死んだってこと？」
彼らはその問いに答えず、もう一度、彼女の息子は首と足をベトナムに置いてきたと静かに繰り返した。
私は理解した。彼らはベトナム戦争のことを言っているのだ。 私は振り向いて、「でも、ベトナム戦争は、アメリカとベトナムの戦争でしょ？ 何故あなた達が関係あるの？」と質問した。
すると、私の耳元でささやいた男性が、普通の声で、「それは、私達がアメリカ市民だからです。 アメリカ市民は市民としての義務を果たさなければならない」
その声を聞いた白人のアメリカ人が、「アメリカ万歳！」とグラスを掲げると、
私のまわりに静かに立って私達の様子を見ていたチャモロ人たちも、大きな声で、「アメリカに乾杯！」と答え、また楽しい宴の輪に入っていった。 【誇りなく 言葉失い 滅びの道】それからずっと後になって知ったことだが、ベトナム戦争当時、アメリカ本土では兵役拒否をする市民がたくさんいたのだが、グアムでは、強制的に連れていかれ（もともと「兵役」というのはそういうものだけど）、そして、白人と違って最前線に送りこまれたとのことである。民主主義国家の市民であるためには、「権利」を主張するだけでなく、「義務」も果たさなければならない。
そして、その「義務」が時に、その国に属することを望まない人々にとっては、「強制」になるのだということを私はその時、知った。
その後、テレビのニュースで、例えば戦前、朝鮮半島の人達が強制的に軍隊に配属させられたとか、強制的に労働させられたとか、強制的に売春させられたとか流れた時 (今では「強制」があったということも疑問視されているが)、そしてそれに対して進歩的文化人たちがヒステリックに反応してたとき、 確かにそうなんだろうけど、大変だったんだろうけど、今現在、グアムの人達は、アメリカが紛争を起こす(起こされる)たび、その地域に送り込まれているんだよ。 そのことは考えなくていいの？ 誰も知らなくてもいいの？
と思って冷めた目で眺めてた。 本当の意味での「被害者」とは、自分たちが今現在被害にあっていることを大きな声で言えない人々、自分達の存在が世間から忘れ去られている人々なのである。 そして、あの戦争での被害者とは、「痛い」とも「苦しい」とも、「死にたくない」とも言えずに人知れずに死んでいった何百万もの人々である。
その「時」を生きていない、被害者の関係者(同国籍者、子孫など)では絶対にないのである。
私達は惑わされてはいけない。 私達は、自分達が「被害者」だと叫ぶ人々の陰に、自分達が「正義の味方」だと叫ぶ人々の陰に、本当の意味での「被害者」がたくさんいることを、もっともっと知らなければならない。 そして、私達は「知らない」と言うことが、時に加害者側に加担するということになることも忘れてはならない。その宴が終わりに近づいた時、また別の初老のチャモロ人が
「私達の話を聞いてくれてありがとう。お礼に明日グアムを車で案内します」と申し出てきた。
ここでは、「～してくれてありがとう。 お礼に…」ってことで、 ことがどんどん運んでいく。
「私達に声をかけてくれてありがとう」→お食事 「私達と食事してくれてありがとう」→ご招待
「私達の話を聞いてくれてありがとう」→ご案内 ただの外国人である私が彼らと共に時間を過ごしただけ。ただそれだけのことが、彼らにとって、とてもとても嬉しいことなのだ。
そして、その喜びを精一杯私に表してくれる。 きっと、今まで、ずっと、そこにいても、いない存在として扱われてきたことがとてもとても悲しかったんだな…。
グアムやサイパン、そこを訪れる観光客が見ているものってなんだろう。 望んでいるものはなんだろう。きれいな海、きれいな海岸、きれいな緑、そして作られた観光施設…。その中に、チャモロの人達は入ってる？
南の島のイメージって、黒い人達が腰蓑つけて踊っているってイメージ。 でも、チャモロ人はそんな格好はしないし、そんな踊りもしない…。
なのに、 自分達の島で、毎日、毎日、観光客がそんなショーを見て喜んでいるの。 そしてそれが彼らなんだと信じて自分たちの国に帰っていくの。
本当の彼らを見ないで…。それって、彼らにはとってもとっても悲しいこと…。そして、私は、「ありがとう（Thank
you）」と言う言葉は、それまでに数え切れない程聞いてきたんだけど、でも、彼らが言った、こんなに心のこもった「ありがとう」はそれまで聞いたことがなかった。 チャモロの人達は、自然の恵みの中で、感謝の気持ちを忘れずに、ずっとずっと平和に穏やかに暮らしてきた人々だったんだなって思った。 だから私もそういう彼らの心に感謝して、彼の申し出を快く受けることにした。次の日、朝の８時にロビーで待ち合わせの約束。
約束の時間の５分前に降りていったら、彼は新聞を読みながら私を待っていた。 その様子から見ると、３０分とか、もっと前から私を待っていた様子。
…え～、こんな朝早くから、申し訳ない。 じゃなくて、本当にありがとう。 島を回っている途中で、彼は道に迷った。
それで、向こうから歩いてくる３０代くらいの女性に、私の知らない言葉で道を尋ねた。
そしたら、その女性が英語で行き方を説明した。 その会話が終わったあと、彼は怒りでバンとハンドルを叩くと、私に「今のを見たか。 私はチャモロ語で聞いたんだ。 それを彼女は英語で答えたんだ」と強い語調で言った。
…そして、 「自らの言葉を失った民族は滅びるしかない…」と静かにつぶやいた。私はサイパン島とグアム島、二つの島で、日本語と英語、２つの言語で、自らの民族を「滅びるしかない」というチャモロ人のつぶやきを聞いたことになる。
近代からの大国同士の戦いのはざまで、同じ民族なのに違う運命をたどった人達…。
でも、このままでは、最後に滅んでしまうという運命だけは共通しているの…。
…悲しい。（完）
★「いのちの風」通信「縁の花」支縁サイト★（毎月３回知人３００人へ送信している、いのちや野宿者、日本についての思いを書き綴っている通信。 政治論では愛国保守系の内容です。 №５０６までのバックナンバーを更新・掲載）http://www.geocities.jp/ennohana/en20isiguroyosihiko.htm ↓
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② 知人の野瀬泰良さんの霊園会社のホームページに、私の体験談を載せていただいています。 美原ロイヤル・ニュース （平成１６年冬季号ＶＯＬ．８の３ページ目） 「【シリーズ】別離の哀しみを乗り越えて 人と人との魂の絆に気づいて 野宿者救済運動を始める」 釜が崎での炊き出しの写真とともに私の体験と考えが掲載されています。http://www.noseh.com/
③ 應典院ＨＰ「いのちと出会う会」（石黒司会の應典院での年９回開催の名物イベント行事）http://www.outenin.com/inochi/index.htmlｍｅｄｉａＸから配信しているインターネットＴＶ『Ｔｖ－Ｗｏｏ(http://tv-woo.jp/)』で應典院での「いのちと出会う会」が映されています。 画面下のお勧め番組「ケースケ講演する 前編・後編 第66回 いのちと出会う会にて」をクリックしてください。
２時間のビデオが放送されます。 紺の作務衣姿の司会者が私です。
④ 大阪メチャハピー祭（立上げの時から参加して実行委員兼踊り子として関わった、鳴子を鳴らして踊るよさこいソーラン踊り系踊り祭。 昨年で７回目、大阪城ホールなどに７０００名が参加する子供中心の踊り祭で子供たちに夢と希望を与えようという大阪の一大イベントに成長） http://www.joy.hi-ho.ne.jp/mecha/「２００６年・大阪メチャハピー祭」のスライドショー（「大阪の子供たちに夢と希望を！」「大阪の商売人がんばれ！」「大阪の文化は日本一や！」 この曲のメッセージを、これからも大阪じゅうにまき散らしていきます。 いつでも踊りの出前行きまっせ！）http://f.flvmaker.com/mc.php?id=Y/xcPpX4__GKUTAF6Eq.PMqehLcwBpX8jEYGJBYuJLOSEhRXPKHlXbvu73Ci83qIZgVPT3bkbolbX1KdiDF7hzs
⑤ せんば花金夜市（よさこいソーラン踊りを私が踊っています。 虎のぬいぐるみも私です。 画面右の写真をクリックすると大きく写ります。 この着ぐるみを着て大阪駅前で野宿のオッチャンたちと掃除もしています）http://www.home-smile.com/hanakin/index.htmlトラッキーの掃除屋さん（別のところで宣伝マンをしている姿です）http://itijikurin.blog65.fc2.com/blog-entry-281.html⑥ インターネットサイトのｍｉｘｉに「大圓（だいえん）」として参加（知人の紹介がないと、ここへ参加して内容を閲覧することはできません。 参加ご希望の方はご連絡ください）http://mixi.jp/show_profile.pl?id=783617・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・石黒大圓 メールアドレス
gytkm947@ybb.ne.jp
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