いのちの風 bS10
3月30日(水)発信 石黒大圓
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今回のテーマ 子グマの殺害/日本熊森協会/温暖化/クマ絶滅/いのちの伝統/美しい日本
いつもありがとうございます。 御堂筋のイチョウは葉っぱが落ちて丸裸の黒色をしています。 しかしその枝に今年も新芽のちいさなこぶが無数につき始めました。
太陽の光が降り注ぐ下にある灌木の木々はすでに黄色い芽を吹き出しています。 「もうすぐ春ですね」とピンクレディーの歌が聞こえてくるようです。
日曜日に「日本熊森協会」のシンポジウムを聴いて感動し、すでに書いていた政治や歴史に関する文章と差し替えましたので、いつもの火曜日送信に間に合いませんでした。
叫ぶ子を見つめる母に妻を見る
奥山に食料がなくなりガリガリにやせ衰えて、人里に降りてきて有害獣として殺されていくクマたち。
ある日仕掛けのオリに捕まった母グマの前で2匹の子グマがおろおろしていました。 その幼い子どもを猟友会のメンバーが撃ったのです。
1匹は即死。 もう1匹は重症のままオリの中の母に取りすがって泣き叫んでいたそうです。
そのいたいけな姿を見て撃ったハンターはその後トラウマになったといいます。 2匹を逃しても母のいない子供たちは野生の世界では生き残れない。
だから無残だが殺してしまう。 住民からクマによる被害が出たとの連絡で、猟友会は駆除に出動し、射殺せざるを得ないといいます。
また北陸の剣岳では親子で山里に下りてきていた親子グマのうちの1頭の子供を撃ち殺したそうです。 それに怒った母グマが襲ってきたためにそれも殺しました。
その2頭がトラックの荷台に仰向けにされている姿がテレビ報道され、抗議の声が殺到しました。 「あんなちいさな動物を殺すなんて!」
母グマの死体に取り付いて泣いている、子猫のような黒い幼い2頭の子グマの姿が写された写真もありました。
日本はいつからそのような度量のない、情け容赦のない社会になってしまったのか。 日本の社会は心が行きづまって、動物だけでなく人の幼い命でさえ無用に殺してしまう、保護本能を失った国になってしまったのでしょうか。
温暖化世界は終わるいつの日にか
何故クマは奥山から下界へ降りてくるのか。 昔からクマは山奥から人里に降りてくることは全くなかったのです。
生息地の奥山で食料となる果実やドングリなどの食料がなくなり生きていけなくなってきたのです。 以前からの温暖化の影響で森林の生育異常が深刻化。 南方系の害虫が北上して木々が枯れる被害が拡大。
また積雪が減少して鹿が増殖し、また増加した暖かい杉人工林で生息するサルも増殖しています。 彼らが同じようなエサをとるクマと競合してエサ不足が生まれているのも原因の1つです。
将来温暖化がますます深刻になればクマの生活圏に多いブナ林の生息地域が北上してしまって、クマは西日本では全く生息できなくなる恐れが出てきます。 昨年は特にブナの木などドングリができる木に全く実が実らなかった大凶作の年でありました。
多くの要因が重なって食料がなくなり、どんどんクマが下界へ食料を求めて降りてきたのです。
絶滅すクマの姿に日本見る
その結果、昨年秋には全国でクマが2000頭以上も殺されました。 全国で8000頭ほどしかいなくなって絶滅種になりかけているにもかかわらず、です。
日本は日本狼、そしてトキも絶滅させてしまいました。 そして童話にも出てくるありふれた動物であった日本のクマも絶滅の危機に瀕しています。
300頭いないとまともな繁殖はできないそうです。 数が少ないと近親相姦的になって結局は絶滅してしまいます。 すでに九州のクマは絶滅しました。 四国もあとわずか。
中国山地の東部には100頭ほど、西部で200頭ほどになって西日本のクマは絶滅の運命をたどっています。
この日本はなんというむごい仕打ちを日本の動物たちにしていることか。 日本列島の住人は人間だけではありません。
動物も日本の「いのち」です。 この日本の「いのち」も救わねば。 この豊かな自然をはぐくんできていただいた祖先や自然に申し訳ない。
行き過ぎた杉の人工林拡大、限りなく進む奥山開発など日本の自然破壊は多くの日本固有の動物を殺し続けています。 動物と植物が共生しなくては森は生きていけないのです。
クマやイノシシが死に絶えた森は死んでいき、森の土壌も干からび、保水能力を失い大雨で土石流の原因になります。 最近、土石流が多発しているのはその警告です。
クマが日本からいなくなるということは日本の自然がどんどん崩壊への道に進んでいるということなのです。 自然災害を予防するだけでなく、日本の動植物の絶滅も予防する対策が必要です。
日本のいのちの伝統絶えなんとす
2000頭も殺されるむごさに猟友会の人々も心痛め内部告発をしてクマを殺さないように関係省庁に働きかけてくれと訴えています。 クマを捕まえる仕掛けのオリにわざわざ水を入れ、クマが中に入らないようにしてくれている善意のハンターもいます。
これこそ日本人の心ではないでしょうか。 動物の声を聞く能力のあった宮沢賢治の童話にも、もうクマを殺さないと銃をたたき壊した猟師の話があります。
日本の地鎮祭はその地の地霊や動植物に、家を建てて迷惑をかけることへの許しを得るためのものです。
フィリピンの山地の人々は川で子供たちが泳ぐ時には、川の霊に川を汚すことを謝罪し、子供に危害を加えないように祈ります。 洞窟に入る時にはそこにいる霊に邪魔することをお詫びして入ります。
また木を切るときには木の魂に、家の材料にするために命を絶つことを詫びます。 これらの習俗と同じことは日本の縄文人やアイヌ、その伝統を継ぐ日本の古来からの人々に守られてきました。
大自然やクマにも人間と変わらぬ「いのち」があることを知っていたのです。 その自然への畏敬の気持ちを失っているのが現代の日本の姿です。
コンビニも無しで生き抜く森の住人
「日本熊森協会」には全国から「クマを救ってあげて」との声が届き、電話が鳴り止みません。 クマを捕まえて奥山に戻せばいい、という声もあります。
しかし奥山にはそもそも食料がないのです。 だから山を降りてくるのです。 クマは木の実や昆虫などが主食の草食動物です。
それのない山では飢え死にするだけです。 飢え死にしそうになっている者が目の前にいるのに、様々な理由をつけて無視することは許されません。 動物であろうと人間であろうと同じです。
私が野宿者支援で考えていることと同じ動機でこの会は動いているので私は支援しているのです。
野宿者への支援を全員が止めれば、大阪中で餓死死体の山が出来ます。 クマも奥山へ押し戻されば奥山で餓死を待つだけです。
かってハンセン病患者は社会から隔離され棄捨されるという運命を強制されました。 彼らに対するのと同じ処置、同じ過ちを繰り返そうとしています。
むごい政策が日本では人間に対しても動物に対しても行われています。 政府が無能なら市民が立ち上がらなくてはなりません。
日本の名誉のためにもこのような不条理は許すことは出来ません。 傲慢な人間社会や森を失った文明は滅び去る運命にあることは過去の歴史が教えています。
生きたいんやクマだって
戦後エサが不足して死にかけていた丹頂ヅルに人の手が差し伸べられ、エサを与えつづけた村がありました。 そのおかげで絶滅することなく繁殖して900羽もやってくるようになったという話があります。
エサに困ったツルだけが来て、エサで精気を取り戻したものは野生に帰っていきます。 緊急的に餌付けをしても簡単に野生の本能を失うことはないのです。
愛情と友情で野生の動物に接するべきなのです。
「日本熊森協会」は全国からドングリを送ってもらい奥山に届けています。 またドングリの実のなる木を奥山に植樹しています。
一頭でも殺されることがないように、と祈りを込めて奥山にドングリを置く活動を続けています。 「ドングリをクマさんに食べさせて」と子供たちの手紙とともに、ドングリがどんどん送られてきて、数日おきにドングリを山に運び上げている人もいます。
このいわばクマへの炊き出しは大凶作だった昨年の緊急処置。 けっして餌付けではありません。 しかしこれによって全てのクマの食料事情が改善されたわけではありません。
空腹のまま冬眠はできないクマにとっては、冬眠前に十分にエサを食べて体に栄養を付けておかなくてはならないのです。 だから冬眠前の秋にクマの大量下山が発生したのです。
空腹のままでは妊娠もできなくて次世代が増殖しない事態となり、ますます絶滅に拍車がかかります。
緑の列島私の誇り
戦後、材木産業として山には金になる杉やヒノキばかりを植えてきました。 そのため動物の食料となる木の実ができる広葉樹は伐採されて、自然林が少なくなり飢餓地獄が襲ってきたのです。
上空から見える日本は緑が連なる列島ですが、森の中に入るとうっそうとして風もない暗黒の森で、下草も枯れて生きていない森の葬列です。
大型動物のクマやイノシシが踏み分け道をつくり、風や太陽を誘い込んできてくれ、その糞は土壌の栄養になっているのです。
人手がなく林業もすたれ、下草刈りも間伐もされなくなった木々は、地中深く根を張ることがなく大雨で一気に崩れ去ります。 それが土石流の大発生です。
人類の未来を決めていくのは目覚めた個人の活動です。 「熊森」の会員は昨年だけで一気に2000名以上増え、6300名になりました。
クマの窮状を知って胸を痛め、インターネットで「熊森」を調べ当てて、行動に参加する人々が日本中からどんどん集まっています。 支部も増え続けクマ救済の実践活動が日本中に広がっています。
ドングリ配布に対して、よく調べもせずに研究者や自然保護団体からの大バッシングがありました。 マスコミも大学の権威に圧倒されてバッシングに追随しました。
彼らに対して「熊森」は闘いを挑み、論争を仕掛け、勝利しました。 先日のシンポジウムには土井たか子を倒した大前繁雄・衆議院議員も参加されていました。
この運動はクマ救援の名をかかげて展開されている一大愛国国民運動と私は位置付けています。
美しき日本の自然残すは人
何千年の歴史を通して日本人は森を守り育て残してきました。 「いのち」を慈しみ、尊ぶ心、やさしい心を日本人は自然の中で育んできました。
本来無用の殺生は日本人の好まざる所です。 自然の「いのち」と共生すること。 鎮守の森はまさにそれを象徴するものです。
クマも住めない世界は人間も将来住むことは出来ません。 今のまま日本の自然が破壊されつづけられたら、私たちの子供や孫に美しい日本を残すことはできません。
そのことを伝えにクマは自らの「いのち」を賭して人間に教えに来てくれているのです。 アイヌはクマを神の使いと見なしました。
クマは神の意思を伝えに来てくれている使者なのです。 無残にも殺してしまうのは日本の神を殺すことです。
どうぞ「日本熊森協会」に入会してください。 無実の罪で殺されていくクマを見ておかしいと思う物言わぬ民は日本中で九割はいます。
声を上げて行動し始めた人々が今「熊森」に結集しています。 日本の「いのち」を救うために、自分の人生に何かを残す道を今、選んでください。
この日本の動植物の危機、日本の自然破壊の現状を知り、日本を守る運動に参加して、ともに行動する仲間になってください。
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