いのちの風 551 
平成20年9月20日(土)発信 石黒大圓(だいえん)

 

今回のテーマ 
「日本捕虜志」英の騎士道精神/米と左翼の罪悪感洗脳/弱者へのいたわりのまなざし
  

 

           
いつもありがとうございます。 福田首相が政権を投げだし、金正日が倒れ、アメリカ金融バクチ経済が地獄の底に落ちていく。 今年の9月はめまぐるしく過ぎていきます。 いま歴史の転換点に生きている気がします。 

 

前回の「日本捕虜志」は評判がよくて、ネットでこの本の古書を買ったとか、図書館で見つけたとのお礼の電話やFAXがありました。 今回は「日本捕虜志」の一部の文章の後半を転載しました。 今度はイギリス人側の騎士道というべき慈悲の精神が描かれています。

 


 
【お互いの 幸い祈り 別れゆく】

 

(引用)
『グリーン博士が帰還の目処がついた、1946年の桜の花咲く頃にあなたがたは日本に帰れるでしょう、とうれしい知らせを告げにきたとき、ちょっと気になることを言った。

 

「ジェロンの収容所にいる日本人諸君が、あるイギリス人に不満をもっているそうですね。 そういう話を聞いていますか?」 「いえ、聞いていません」 「私も確実には知らないのですから、今の話は取り消します。」

 


それはどうもこういうことであった。  ジェロン収容所はシンガポールから5マイル離れたところにあった。 帰還船が3隻あったが、輸送指揮官の少佐が男だけ乗せて、女の乗船を許さなかった。  その後、暴風雨が吹く季節風が吹く時期となり帰還船は止まった。 そこで女性のなかで怨嗟の声が起こったのであった。 それを残った男どもが声を合わせるものだから不満は大きくなる一方だった。
 
3月下旬にやっと1隻入ったが、やはり女性の乗船は許されなかった。 少佐に対する怨嗟の声は大きくなる一方だった。 やっと次の引き上げ船がタンジョン・バガーの大桟橋に入ってきて、やっと女と子供全員の乗船が許された。 女性たちは満腔の不満を胸いっぱいにして乗船してきた。

 


するとそのイギリスの少佐がお別れにきてこんなことを話した。 「皆さんは私を怨んでいたそうですね。 でも私は皆さんに少しでも楽に日本で帰れることのほうが、私は大切だったのです。 私は船が入船するたびに検分しました。 そして一番気になるところを見に行きました。

 

この船には婦人用のトイレを心して作ってあります。 これならばほかのところもよいだろうと思いました。 私は戦時用の輸送船にあなたがたをおしこめて不快な不自由な思いをさせたくなかったのです。」

 


女性たちの顔から恨みや不満の表情が消え、感謝の表情に変ってきた。 そしてその船が桟橋を離れる時、少佐へのせめての感謝のしるしにとどこからともなく「蛍の光」が歌われ、歌声は60人ほどの女性たちの声で唱和されたのであった。

 

一  蛍の光、窓の雪、
書よむつき日、重ねつゝ、
いつしか年も、過ぎのとを、
明けてぞ今朝は、別れゆく。
.
二 止まるも行くも、限りとて、
形見に思うふ、ちよろづの、
心のはしを、ひとことに、
幸きくとばかり、歌ふなり。

 

イギリス軍の兵隊達はいついつまでもその船の影が見えなくなるまで見送っていたそうです。

 


グリーン博士は送別の席で収容されていた日本人に向かってこうスピーチされたそうです。
 
「人生は劇のようです。 私と皆さんとは劇に登場しました。 皆さんはその劇の後半に登場しました。
前半の劇は私とカンニング博士がここにはいない、名前を知らない日本人の皆さんが登場しています。 その人たちは私たちに偉大なことを教えました。

 

私たちが劇の前半でその幾人かの日本人を見なかったら、また、その行いによって感動することがなかったら後半の劇はなかったことでしょう。 私はその劇に人の心のともし火は消えずと題名をつけたいと思います。

 

皆さん、明日別れて後の生涯に、再会のときがあるでしょうか。  恐らくはないでしょう。 よし、さらばあいまみゆるときはなくとも、お互いの心のともし火は決して消えることはないでしょう。」と。』
                                 (引用 終わり)

 

心の灯火は消えず「日本捕虜志」長谷川伸
http://plaza.rakuten.co.jp/jifuku/7068
 

 

 

 

【亡国に到る いつまで続く 罪悪感】

 

かくも美しい敵・味方を超えた交流があったとは知りませんでした。 このような事実を教えないアメリカ占領軍。 戦後日本に進駐してきたアメリカ占領軍は日本占領政策として「ウォー・ギルト・インフォメーション・ プログラム」という宣伝工作を行いました。 

 

戦争についての罪悪感を日本国民の心に植えつける一方で、日本国民は軍国主義者による被害者であるという洗脳をほどこしました。 

 

軍国主義者に理不尽にも支配されていた日本国民をアメリカは救ったのだ、と巧みに宣伝したのです。 原爆や都市無差別攻撃など非人道的な戦争をしたアメリカ軍は、その宣伝工作によって免罪符を得ようとしたのです。 そして日本軍と米軍の間で行われた戦いを忘れさせ、日本の軍国主義者と国民とを対立させようとしたのです。 

 

そのような思考法は今も左翼が沖縄自決冤罪裁判などで利用しています。 

 

アメリカ占領軍や戦後左翼がそのような罪悪感洗脳を行ってきたのは、日本における伝統的秩序を破壊するためです。 伝統的秩序が破壊された時には、祖国への愛国心のない根無し草が生まれる。 そのような国民は二度と残虐非道な戦争をしたアメリカへ復讐心をもたない。 二度とアメリカへ立ち向かっていくことをしない。 

 

そして左翼にとっても根無し草となった人間は愛国心を失い、祖国への忠誠心より社会主義ソ連や中共へあこがれを持つように仕向けられる。 この占領軍と左翼によって日本人を奴隷化する永久革命が成立するのです。 

 

そのような危機意識があって、長谷川伸は日本軍の連合軍捕虜への虐待を、理不尽な誤解だとして「日本捕虜志」を書いたのでしょう。

 

 

 

【弱者への いたわりの気持ち 永久にあれ】

 

他にもネットで調べたら別の方の感動的な文章がありました。 人の論考ばかりを引用して申し訳ありませんが、お読みいただけたらありがたいです。

 

(引用)
『そもそも日本人の情感というものは日本人だけに備わったものなのだろうか、いずれの国であっても人であれば同じではないのだろうか。 いくつかの国で暮らしてみて、それは同じものという思いはあるのだが・・・。

 

しかし太平洋戦争中にアメリカ軍を震撼させたカミカゼ特攻隊の2600人を越える若者たちの純粋、あるいは己の属する組織や社会に対する忠誠心は他国とは比較できない日本だけの特別な精神土壌があるように思える。

 

日本人ほど我慢、辛抱、忍耐といった自己抑制の出来る人種は世界に類がないのは実に明らかであるが、日本美術を語るときにワビ、サビという言葉が使われるように、誤解を恐れずに言えば日本人の心には仏教で言うところの「達観」があるように思えてならない。

 

長谷川伸作品で際立っているものは弱者を描いていることで、勝者ではない。 勝者から見た弱者はそのまま弱者でしかないが、弱者から見た弱者にはあらゆる思いが込められる。

 

 作品に登場する無宿の渡世人に向ける優しいまなざし、はかない運命に翻弄される女たちに注ぐいたわりの目、読むたびに作家その人が弱者と自認していたのではないかと思えてくる。 しかし弱者がそのまま敗者とはならないことは言うまでもない。
 

 

「シェーン」という題名の西部劇がある。これはアメリカ版「沓掛時次郎」なのだが、西部劇には珍しく弱者を描いて秀逸な映画である。 登場人物のすべてが弱者であると言っても過言ではない。 身を寄せた農夫一家の妻によせるほのかな恋心、やくざな自分を慕う少年への戒め、最後の決闘で傷つき、少年の声を振り切って山のかなたに去るラストシーン、主人公であるシェーンも決してヒーローではない。 

 

このラストシーンの解釈には諸説あるが、仮に傷ついていないとしても主人公は死に場所を求めて去っていったであろうと私には思える。

 

長谷川伸作品に登場する番場の忠太郎、駒形茂兵衛、沓掛時次郎、鯉名の銀平、相良総三もしかり、これらの人たちも振り返ることを許されない、死に場所を求めることが弱者である彼らの存在を証明する唯一の手段であるかのように。

 


紫綬褒章を固辞してあくまで市井の人として生きた巨星は昭和三十八年六月十一日、七十九歳で永眠した。 その葬儀に参列した各界の著名人に混じって惜別の涙を流す無名の人たちからもたらされたものは、多くの人を驚かせ、あらためて偉大な人物の存在を知らしめたのである。

 

彼らは両親を失った孤児、母と別れた娘、学費に困窮する学生たちで、長谷川伸の差し伸べる援助の手で成人したのであるが、生前の作家はこれを誰にも告げることはなかった。 形こそ違え作家は人への思いを作品のとおりに具現化していたのである。』

 

長谷川伸
http://members.at.infoseek.co.jp/haruan_busters/link11.htm

 


【参考】インターネットで古書ですが、本を手に入れられます。
日本捕虜志 上
http://www.amazon.co.jp/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E6%8D%95%E8%99%9C%E5%BF%97-%E4%B8%8A-1-%E4%B8%AD%E5%85%AC%E6%96%87%E5%BA%AB-27-3/dp/4122006813
 
日本捕虜志 下
http://www.amazon.co.jp/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E6%8D%95%E8%99%9C%E5%BF%97-%E4%B8%8B-3-%E4%B8%AD%E5%85%AC%E6%96%87%E5%BA%AB-27-4/dp/4122006821
司馬遼太郎と長谷川伸と日露戦争
http://geocities.yahoo.co.jp/gl/oyassannsabu/view/20080918/1221685933
 

 

(完)

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