いのちの風 bU63―その2
石黒大圓(だいえん)
【今回のテーマ】
ビッグイシュー販売員/気合、やる気がすべて/人生をあきらめない
(その1からのつづき)
【不遇に挑戦 彼らの上に 幸よあれ】
これからは私、大圓の感想ですが、
売上は場所、不景気などが原因で低迷、ばかりではなく「人の気合とやる気」に尽きると思いました。 戦後焼け野原で路上で商売を始めて成功した人も、このような優秀なビッグイシュー路上販売員の気質をもっていたのでしょう。 その意味で今の経営者も彼らに学ぶ所が多いと思います。
日本人は寡黙で勤勉、律儀、真面目、しかし能力は世界的に見て一番と私は思っています。 今までビジネスや技術の上で「プロジェクトX」のような偉大な成功例を見てきましたが、今回のようなホームレスの成功例には驚きました。
最近は来ていないのですが、炊き出しスタッフとして常連でした。 彼は炊き出し手伝いの野宿者のなかでも飛びぬけて陽気でよく笑い、よくしゃべり、こんな人がどうしてホームレスなのかと思いました。
彼は仕事を転々と変えなくていけない不遇な人生を歩み、離婚もし、建設現場で20年働いた。 低い給料と人間関係に悩み離職。 最後は貯金を使い果たして路上生活へ。 空缶集めや夜回りのボランティアをしている中でビッグイシューへたどり着いた経歴です。 いつかは部屋を借りて元の旋盤工としての仕事をやりたいと夢を語っています。
販売員にもピンからキリまであります。 ホームレスには高齢の元日雇い肉体労働者が多く、会話が少ない土木現場で働いていた人が多い。 ですから雑誌セールスをするのは本来苦手。人通りが少ない場所で寡黙にただ立っているだけで一日数冊の販売という人もいます。
だが猛暑、酷寒のなかでも一日中立って販売して自立しようという彼らには頭が下がります。 色々な事情で路上へ転落して立ち上がれない人々もいます。 しかし基本的に彼らは怠け者ではない。仕事さえあれば本来の日本人としての気質でやる気を起こしてくるはずです。
長い間の路上での不規則な生活に疲れて、本来もっているはずの能力が発揮できていない。 彼らにも問題はある。 しかし彼らに仕事を与えられなくなってしまった疲弊した日本社会にも問題はあるのではないでしょうか。
彼らのなかに潜んでいる能力を開花させる仕組みをつくれば、彼らも十分に企業の戦力になり得るはずです。 ビッグイシューはそのことを証明した、と服部さんも私もそう信じています。
【人を見捨てない あきらめない 真の人】
再びビッグイシューそのものの説明に戻ります。
ビッグイシューは平成3年にロンドンで生まれ、日本では平成15年9月に創刊しました。 ホームレスの人の救済(チャリティ)ではなく、仕事を提供し自立を応援する事業です。
例えば大阪では野宿生活者の約7割が空缶やダンボール集め、ガードマンなどで働いており、過半数の人は仕事をして自立したいと思っています。 「ビッグイシュー日本版」は働いて収入を得る機会を提供します。 販売者は雑誌ビッグイシューの代理店、ビジネスパートナーであり、自営業者です。
ビッグイシュー日本は100%失敗するといわれました。(私、大圓もそう思っていました) 日本では、1若者の活字離れ、2雑誌の路上販売文化がない、3.優れた無料誌が多く有料では買ってもらえない、4ホームレスからは買わない、という四重苦があると見なされていたからです。
創刊から9年、赤字に苦しみながらこの常識に挑戦してきて、やっと4年目にして黒字転換しました。 ビッグイシューは「人生をあきらめないホームレスの人が売る、人生をあきらめない人の雑誌」として支持されてきたからでしょう。
ビッグイシューの読者は、他者や社会の問題を自分のこととして考える、オピニオンリーダーの素養を持った人たちが多いようです。 読者の66%が女性で、環境・エコロジーや自由・人権、仕事・働き方、平和といった話題に関心が高く、また国内だけでなく国外の社会の動きにも敏感な人たちです。 (つづく)
(完)
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