いのちの風 bU69―その1
平成24年10月17日(水)発信
石黒大圓(だいえん)
【今回のテーマ】
ホームレス支援は武士道なのか?/人間万事 塞翁が馬
いつもありがとうございます。 涼しくなりましたね。 今年は特に早く涼しくなりました。 今週月曜日の炊き出し現場から今年も寝袋配りを始めました。
【ホームレス支援は武士道なのか】
この高架下は私たちが毎週炊き出しのあと掃除をしていていつも野宿者が数人が寝ています。 私たちの炊き出しでもらったおにぎりをここで食べている人を見たこともあります。 ひどいことです。 夜中に遊び気分で若者が襲撃したのでしょう。 亡くなられた富松さんのご冥福をお祈りします。
今回の炊き出しにはこの被害にあったうちの野宿者2人も列に並んでいました。 殴られて目やあごが腫れ上がっていました。 野宿者が寝ているダンボールを蹴った、おそらく酔っ払いのグループに対して怒った人が殺されたのでしょう。
そのまわりで寝ていた人々も彼らに足で殴られて被害にあったのです。 その人に今年も寝袋を渡してあげたかった。 無念です。 私がいる商店街では数年前にダンボールで寝ているホームレスに火をつけた男の姿や火をつけられた彼が飛び出してくる姿が商店街の監視ビデオに映っていました。
ホームレスや私たちのような支援者に敵意をもつ人がいます。 数年前に酔っ払ったそんな奴に「道に古着を並べやがって行き来の邪魔だ。怠け者など支援するな」と通報されました。 それで警察やJRに命令されて、炊き出しの場所が今の辺ぴな場所へ移動させられたのです。
その場所がようやく許可を得て確保できたので、炊き出し中止という事態にはならなかった。 しかし私たちの試練はそれだけではない。
この現場へ来る道の上にあった2階建てビルが解体されるので、ここが今夏に工事現場になりました。一時は私たちの活動も終わりか、と悲観した時もありました。 この場所に高層ビル建設が始まったら完全に炊き出しは終わりでした。
しかしどうもビル撤去だけで済みそうです。 天に感謝です。 工事中は狭い場所に閉じ込められますが工事が終われば元に戻れそうです。 そうなるようにただ祈るのみです。
先月に聞いた藤原正彦さん(ベストセラー「国家の品格」の著者)の講演で「日本人は惻隠の情(弱者へのいたわりの心)や慈悲の心を失ってきている。それが日本の武士道精神なのに」と歎かれておられました。 「ホームレス支援は武士道なのか」と思って、うれしくなりました。
日本軍の武士道精神について書きます。
日本軍は戦場において、たとえば日露戦争においてロシア敗軍のステッセル将軍に対して武士の情けとして帯刀を許して、記念撮影を行ないお互いの健闘をたたえ合いました。
また大東亜戦争初期のマレー沖会戦においては英国が誇る戦艦プリンスオブウェールズが沈んだとき、日本軍は、帰還のための燃料に不安がありながらいっさいの攻撃を停止し、海上を漂流中の英軍将兵が別の英国艦船に救助されるところを見届けました。しかも翌日には日本軍機が再度飛来し機上から沈没現場の海面に花束を投下して英海軍将兵の敢闘に対し敬意を表しました。
またスラバヤ沖会戦では日本戦艦「雷」が、艦長の「敵兵を救助せよ」との命令のもと、日本兵士たちは海に飛び込んでまでして、撃沈され海上を浮遊中の英国軍将兵を救助しました。 敵からの攻撃があるかもしれない危険のなかでの「海の武士道」の発揮でした。
(その2へつづく)