平成19年12月24日 世界日報に掲載。
「ホームレスに寝袋配布し続けて6年」
同胞を、凍死から救いたい
大阪の石黒大圓さん
毎冬、約二百人のホームレスが凍死、病死などで亡くなる大阪。その街で、「いのちと出会う会」代表世話人の石黒大圓(だいえん)さん(60)は、六年前から野宿者に寝袋配布を続けている。
四歳の二男を白血病で、また妻を四十九歳で失った石黒さん。 悲しみで鬱(うつ)になり、つらい一時期を体験した。
「愛する家族の命を助けることができなかった。 だから凍え死ぬかもしれない人々を目の前にして、素通りはできない」。手渡す寝袋に愛が込もる!!。(鴨野守)
「寝袋いりませんか」今月二十一日午後九時半すぎ。
石黒さんは仲間の植田敏明さん(46)と、大阪市内の駅前や商店街の路上で寒風にさらされながら休むホームレスに優しく声を掛けていく。
毎冬十月から三月まで毎週金曜日の夜、三時間ほど寝袋配布をして今年で六年目。日本最大のドヤ街・釜ケ崎や天王寺駅周辺、天王寺公園などを車で回り、野宿者に寝袋を手渡していく。
師走の空にクリスマスソングや忘年会帰りの人たちの歓声が響くが、彼らに訪れるのは空腹と寒さだ。そんな夜中に、突然差し出されるプレゼントに「おおきに」と笑みを浮かべる人、いとおしい家族のように抱きしめる人。
寝袋を有料と勘違いして「金持ってへんねん」と言う人が、「いいえ、差し上げるのです」と聞いて、予期せぬ善意に触れて泣き出す場面も。
「大阪市内では野宿生活者が五千人を切ったと言われるが、新たに仲間入りする人もいます」と石黒さん。
女性ホームレスはわずかだが、彼女らの多くが精神を病んでいる。 大阪の路上で凍死、餓死などで亡くなる人は約二百人。
病院に搬送されてから亡くなる人は約七百人という。
「この豊かな国で、同胞が凍死するという悲惨な現実は日本人の恥、大阪人の恥です。せめて寝袋の中で温かい夢を見てもらいたい」
石黒さんらは寝袋の配布だけでなく炊(た)き出しや大阪駅前の清掃などもする。
放置しておけば死んでしまう危険のあるホームレスがいたら救急車を呼ぶこともあった。 できる範囲で彼らのために最善を尽くしたい!! その一心で行動している。
その活動の出発点には、妻子を病気で亡くしたつらい経験があった。平成元年八月、二男の邦之君は白血病で亡くなった。
「僕、何も悪いことしてへんのに、何でこんな苦しまなあかんの」という言葉を残して。
愛するわが子への必死の看病も報われなかった妻、佐知子さんは八年後に胃ガンで死去。
石黒さんの耳には今も「あなたと結婚できて幸せでした」とささやいた妻の言葉が残っている。 失意の中で鬱となり、一歩道を踏むはずしたら、ホームレスの仲間入りをしていたと石黒さん。
ホームレスの中には高度経済成長を肉体労働者として底辺で支えてきた人たちもいれば、家庭の事情で小学校で学ぶこともできずに働き続けてきた人もいる。
二十一日に会った四十代の男性ホームレスは勤労意欲を急激に失い、鬱病で自殺も考えたという。彼らをただ怠け者とか弱者として見捨てることはできない、という石黒さん。
「心ある日本国民がこの現状を変えていくために汗を流すことが大事だ。 それが国を守ることにつながる」活動を通じて、この信念はますます深まっている。 石黒さんへの連絡は090−1146?7351
(写真) ホームレスに「寝袋いりませんか」と声を掛ける石黒大圓さん(中央)21日夜、大阪市内で