大河ドラマ風林火山 第6話 
「仕官の道」 三条婦人


 三条婦人が、晴信にと嫁いだのは、今川義元と武田信虎の和睦が整った後です。今川家の紹介で、公家の三条家から、晴信に、十六歳の時、京都から来ているのです。これには、寿桂尼の仲介をしたといわれています。信虎は、京都に、憧れが強く、とても喜んでいたのです。

 しかも三条婦人の姉は、 姉は細川勝元夫人、妹は本願寺の顕如の裏方(夫人)と言います。後に信玄は、勘助亡き後、長年の夢、天下統一に向けて、軍隊を動かしていますが、その時も、信長包囲網を作る時に、本願寺とのご縁は、大いに役立っています。信玄は、信長を苦しめた一向衆、本願寺の縁を利用したのです。

 また、信玄と三条婦人の仲も最初は、良かったといわれています。三条婦人は、三人の息子と三人の娘を生んでいるからです。でも、嫡男の義信は無事に育ちましたが、次男の竜芳(竜宝)は盲目であったと言われ、武士としては育たず僧籍に入ることになりましたし、三男の信之は十歳にして早世しています。娘は、三人とも無事に育ちましたが、辛い日々を過ごすことになるのです。

 それに信玄は、正室の三条婦人以外にも、諏訪頼重の娘だった、諏訪御料人、由布姫や、信濃一の美人と言われていた禰津夫人や、菊姫や松姫の母になる油川夫人を愛するようになります。何人かの側室を持つことになるのです。

 だから、新田次郎の小説や、井上靖の原作でも、三条夫人は、由布姫をいじめる、意地悪い婦人として描かれています。公家の出の三条婦人は、家を滅ぼされ、父親を殺されている信玄の側室になった由布姫をいびったというのです。でも、実際にそんなことがあったという事実はありません。あくまでも小説の世界、ドラマの話です。

 ですから菊は、三条婦人をかわいい池脇千鶴さん、その自助を浅田美代子さんがするのは大賛成です。この二人なら、あまりいじめる演技はできないと思います。実際の三条婦人は、名門三条家の姫として、何があっても、動じず、信玄の愛情がうすくなったことを感じても、誇りを持って、賢人として耐え凌いだと思うからです。

 でもそんな三条婦人にとって一番の不幸は、川中島の戦いで、勘助が亡くなった後、信玄の目が駿河に向いた時からでした。嫡男の義信は、三国同盟で、妻を今川家から貰っています。その実家の今川家を侵略することに対して、反対で、父親の信玄と対立する事になります。

 それで最後には、信玄が、信虎にしたように、信玄を、武田家から追放するという謀反を企て、露見したことで、自害する事になりますし、長女も、信玄が、今川家に侵略したことを怒った、氏康によって、北条家から離縁させられています。しかも、長女の梅は、北条氏政と仲がよく、四人もの男の子を産んでいるだけに、その事がショックですぐになくなっています。こんな悲しいことが続いたのです。この時の三条婦人の嘆きは、いかばかりだったかと思います。

 だけど三条婦人は、そんな信玄の為に最後まで尽くしてくれています。三条婦人も、長女が亡くなった一年後亡くなっていますが、妹が、本願寺の顕如の裏方になっている縁は、信玄の為に、最後まで守ってくれたのです。そのことに、深く感謝して、信玄の正室、三条婦人に心から感謝したいと思います。どうか、池脇千鶴さん、いつまでも、悠然としている三条婦人を演じてね。お願いします。南無阿弥陀仏です。 


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